連載|ファーティリティコーチって? 〈第 1 回〉 “治療の谷間” を埋める、もう一人の味方を知っていますか?

Akira Watanabe
10 July 2025

アメリカでは 5 人に 1 人が「コーチ」と並走する時代に

アメリカの不妊治療は年々件数が増え、2023 年には体外受精による出生が 9 万 5,000 人 を超えました。一方で通院や投薬の負担から途中離脱する患者は少なくありません。医療技術は進歩しているのに、患者の心理的・生活的な課題は置き去りになっている――この“ギャップ”を橋渡ししてきたのが、ファーティリティコーチです。

調査会社 KFF の 2024 年レポートによると、IVF 経験者の 18% が「何らかのコーチング・カウンセリングサービス」を利用しており、その満足度は 82% に達しました。医師でも看護師でもない、けれど同じ船に乗る伴走者。彼らは具体的に何をしてくれるのでしょうか。

「治療の谷間」を埋める 3 つの働き

ファーティリティコーチの仕事をひと言で表すなら、医療と生活をつなぐ翻訳者。私はニューヨークの大手クリニックで働くケイトさん(看護師資格を持つコーチ)に話を聞きました。

  1. 専門用語の翻訳者
  2. 検査や手術の説明は医学用語が中心です。ケイトさんは診察後、患者とオンラインで 30 分ほど時間をとり、「検査の目的」「次の一手」を平易な言葉で整理します。ここで “わかったつもり” を解消するだけで、不安が劇的に減ると言います。
  3. 感情の整理役
  4. ホルモン治療の副作用、結果待ちのストレス、パートナーとの温度差。感情の揺れ幅は大きく、それを医師にぶつけるわけにもいきません。コーチは医療判断を下すことはありませんが、感情を安全に吐き出し、対処法を一緒に探してくれます。
  5. 生活設計のナビゲーター
  6. 注射・採卵・通院。仕事や家事と両立するには、カレンダーアプリやリマインダーを駆使した綿密なスケジュール管理が欠かせません。コーチは各イベントを生活リズムに落とし込み、職場への説明用テンプレートまで用意してくれることもあります。

ケーススタディ:共働き夫婦 N さんの「夜が明けるまで」

東京とニューヨークを行き来する N さん夫婦は、複雑な投薬計画を前に度々ミスを起こし、自己注射の失敗から夫婦げんかへ発展することもありました。ファーティリティコーチと出会って最初にしたのは、“全部書き出す” こと。

  • 投薬スケジュールを Google カレンダーに共有
  • アラートを「夫婦両方のスマホ」に飛ばす設定
  • 職場上司への説明資料をテンプレート化

結果、注射ミスは 0 件になり、通院遅刻もなくなりました。N さんは振り返ります。

「治療の成功だけでなく、夫婦としての空気が変わったんです。

“第三者の味方” が入ることで、私たちが互いを責める時間が減りました。」

なぜアメリカで広がったのか

背景には三つの追い風があります。

1. 福利厚生の拡充

米国企業の 4 割以上が生殖医療を福利厚生に組み込み、コーチ費用をまかなうプランも増えました。費用ハードルが下がったことで利用者が一気に拡大しました。

2. テレヘルス規制の緩和

コロナ禍を機にオンライン相談が一般化。州をまたいでコーチングを受けることも容易になり、地方在住者の需要を掘り起こしました。

3. “Treatment Gap” への問題意識

技術進歩が進むほど「説明が追いつかない」現場の課題が可視化され、医師側がコーチと連携するメリットを認めはじめています。

日本での可能性と宿題

日本でも個人開業やオンラインサービスが芽を出し始めていますが、本格普及には二つの課題があります。

  1. 医療広告ガイドラインとの整合性
  2. コーチは医療行為をしない一方、誤解を招く表現は規制対象になります。導入には法的な線引きをどう引くかが不可欠です。
  3. 男性妊孕性ケアとの接続
  4. 男性側の相談窓口は依然として限られています。コーチを通じてパートナー双方の負荷を可視化し、チーム戦に持ち込めるかが鍵になります。

よく寄せられる質問

Q. 医師や看護師のカウンセリングとどう違う?

A. 院内スタッフは自院の治療を前提にアドバイスしますが、コーチは患者視点で複数クリニックや治療法を比較し、生活全体を設計します。

Q. 費用はどのくらい?

A. アメリカでは 1 セッション 80〜150 ドル、日本では 8,000〜15,000 円が目安。多くの患者が「治療中断リスクを減らす投資」として利用しています。

次回予告

「5 本柱のサポートを、どんなツールと手法で実践しているのか?」

具体的なケースと、AI チャットボットを併用した最新の支援モデルを紹介します。

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編集後記

医療技術が進歩するほど、人が “人” として寄り添う役割が余計に求められるのかもしれません。ファーティリティコーチは、その象徴的な存在です。あなたの治療の隣にも、この新しい専門家が立つ未来を想像してみてください。

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